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    【SS】妹「お兄ちゃん朝だよ。起きて?」

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    1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 19:59:56.96 ID:HibLBsg40

     静かな寝息が聞こえる。
     それほど近くに、私はいる。
     兄のベッドの枕元。

    「待っていたって、手には入らなかったね」

     小さな、小さな声で兄に語りかける。


    2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:04:48.91 ID:dE+ujXmv0

     きっと兄も私のことを好きなのだと思っていた。
     それは馬鹿げた考えだ。そんな筈ないのに。
     私は──家族愛に幻想を抱いていただけだ。

    「彼女が、できたんだってね」

     今日聞いた。
     兄本人の口から、直接。
     凄く切ない気持ちになった。
     晩御飯は喉を通らなかった。




    5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:06:54.88 ID:dE+ujXmv0

    「おめでとう」

     心からは言えない。
     行動しなかった私が悪いのは分かっている。
     けれど行動したところで──きっと結果はもっと悪いことになっていただろう。
     妹が兄を思うなんてことは、この世界ではおかしなことだから。

    「変──なのかな?」

     変なのだろう。
     いや、変なんだ。


    7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:08:49.59 ID:dE+ujXmv0

    「私が、お兄ちゃんを好きになるなんてことは──さ」

     そう言い聞かせる。
     そうでなければならない。
     そうでなければ、諦めがつかない。
     
     ──違う。
     そうであっても諦めがつかないから──だから、

    「お兄ちゃんに、変だよって、そう言って欲しい」

     でも怖い。
     それを言ってもらうということは、私の気持ちを伝えるということだから。
     そんなこと言ったら、嫌われるに決まっている。
     私の望みは叶わない。


    9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:10:01.59 ID:dE+ujXmv0

     例えどんな望みだって叶わない。
     好きになってもらうことも、
     自分が諦めることも。
     どうしようもない。
     
     だから。
     こんな世界はもう嫌だ。
     死にたい。
     
     でも、死んだら兄に会えなくなる。
     そのほうがもっと嫌だ。
     だから見ているしかない。


    11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:11:49.02 ID:dE+ujXmv0

    「お兄ちゃんが幸せになるのを」

     それを私の幸せとするしかない。
     人は幸せになるために生きているのだから。
     不幸になるために行動する人なんていない。
     それが客観的に見て不幸に見えたとしても、本人は確実に幸せに向かって生きている筈──。
     私はそう思う。
     
     だから、私は自分の『幸せ』のカタチを変える。


    13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:13:12.64 ID:dE+ujXmv0

     *

     いつだったか、話してくれたね。
     色の名前の話を。
     
    「色には色々な名前がある」
    「何それ、ちょっとしたギャグ?」
    「違う。これを見ろ」

     兄は、両手に絵の具の入ったビンを持った。
     どちらも青色だ。
     兄は水彩画を趣味としている。


    15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:15:32.70 ID:dE+ujXmv0

    「それが何?」
    「何色に見える?」
    「青──だけど?」

     ただ、左手に持ったほうが少し色が濃く見える──。
     でも青だ。
     そうとしか表現できない。
     比べなければ分からない程度の違いだ。

    「ハズレ」
    「じゃあ、何?」

     やっぱり──。
     私はふてくされながら答えた。


    16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:17:19.41 ID:dE+ujXmv0

     兄は右手を掲げた。

    「こっちは、青色」

     次に左手。

    「こっちは、瑠璃色」
    「るり色? 何それ、聞いたことない」
    「本当か? 瑠璃は聞いたことあるだろ? ラピスラズリのことだ。
     それは知ってる? 知らないか、青い石。その色だよ」
    「ふぅん?」

     ピン、とこない。
     名前は知っているが色は浮かばない。
     私は石に興味がない。


    17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:20:01.91 ID:dE+ujXmv0

     そもそも色にも興味がない。
     兄の描く絵が好き──という、それだけのことだ。

    「それで?」

     と、私は兄の語りたいであろうことを促した。

    「お前にとってこれは両方とも『青色』だったわけだ」
    「そうだね」
    「でも俺からすると、『青色』と『瑠璃色』に見えた」
    「それはお兄ちゃんがその色の名前を知ってたからでしょ? 私も知ってたら分かったよ」

     そうだな、と兄は微笑みながら優しく言った。

    「名前の知らないものは分からない。そして──名前の知らないものはその世界には存在しないんだ」
    「うん? どういう意味?」


    18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:22:33.57 ID:dE+ujXmv0

     存在している。
     現に目の前に。
     何を言っているのか分からない。
     だから首を傾げた。
     兄は少し困った顔をした。

    「なんていうかな、俺の内面って言うか、俺の頭の中と言うか、知識?
     違うな──俺のセカイってのが適当だろうな。とにかく俺のセカイには『瑠璃色』があって、
     お前のセカイには『瑠璃色』は存在しない。今はあるかもしれないけど、ちょっと前までは無かっただろ?」
    「そう──だね」

     難しい表現だ。
     でも何となく分かる。


    20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:26:04.94 ID:dE+ujXmv0

     私は確かにさっきまでその濃い青を青としか認識できなかったのだから。
     きっと単体で出されたら違いなど分からなかっただろう。

    「だから、『俺のセカイ』と『お前のセカイ』でも、存在しているものが違うんだよ。
     確かにそれは二人の世界で共通して存在しているかもしれない、ただ──『存在のしかた』が違うんだ。
     認識の違いとでも言えば簡単なんだろうケドさ、そうじゃなくって」
    「お兄ちゃん」

     私は語気を少し強めて、兄を呼んだ。

    「分かりません」

     そしてやや慇懃にそう申し立てる。
     すると兄はバツが悪そうに──スマン、と言った。

    「走りすぎだよ。哲学的な話はわかんないよ。難しい」
    「そうか。例えが拙かったかなぁ──」


    21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:30:13.52 ID:dE+ujXmv0

     兄は言いながら頭をひとつかいて、スケッチブックへと視線を戻した。
     筆を走らせる。
     
     外にいる。
     青空の下。健やかな風が吹いている。春だ。
     とても心地がいい。
     
     二人で木陰に座って。
     兄は絵を、私は兄の空気を感じながら。
     木漏れ日に身を浸していた。
     
     幸せな気持ちだった。
     ずっとこんな風に兄と語っていられたら──。
     ちょっと難しいけれど。
     それでも、それだけで幸せなのに。


    23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:34:34.74 ID:dE+ujXmv0

     ──バカらしい。
     詩人でもあるまい。
     
     でも。
     兄の話してくれた『色の名前』の話。
     それは色だけに限ったコトではないのだろう。
     きっと『名前』のある全てのものが、それに当て嵌まるんだ。
     だからこの、今私が抱いている感覚ですら。
     『幸せ』ですら、きっと──。
     その『存在のしかた』が違うのだろう。
     
     兄と私の『幸せ』は、違う。
     だから──。


    24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:37:35.09 ID:dE+ujXmv0

     *

     二人の『幸せ』の『存在のしかた』が同じであるということが。
     きっと、愛なのだろうと思う。
     
     だから──私と兄は結ばれることは無い。
     だからこそ。
     兄の『幸せ』の『存在のしかた』を変えることができるのならば。
     兄が私に『瑠璃色』を教えてくれたように、私の『幸せ』を兄に伝えることできるのならば──きっと。
     
     でも、『幸せ』には色が無い。
     『瑠璃色』みたいに色が無い。
     だから見せることができない。
     
     どうしたらいいのだろう。
     どうすべきか分からない。
     どれだけ考えたって、答えは見つからない。
     見つからなかった。


    25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:39:31.91 ID:dE+ujXmv0

     兄に彼女ができた。
     きっとその内に結婚して、子供を育むのだろう。
     そこに私はいない。
     
     それじゃあ、死んでいるのと一緒じゃないのか。
     結局兄と一緒にいることは叶わない。
     胸が奥が苦しい。
     
     でもだからこそ、私はこの一時の幸せをかみ締める。


    27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/20(土) 20:42:22.69 ID:dE+ujXmv0

    「お兄ちゃん朝だよ。起きて?」

     言いながら肩を揺らす。
     兄は目覚めて、不機嫌そうに私の名を呼んだ。
     いつものことだ。
     寝惚けた顔が可愛い。
     ほらほら早く起きて──と、カーテンを開いて朝日を部屋に導く。
     
     この日常が続くまでは。
     私はきっと幸せだ。
     それでいい。
     それだけで。

     おわり



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