やっちまったよ

あ、正確にはミュージカル映画な。
サウンドオブミュージックとか、あぁいうの。

上司のいびりとか諸々あったり残業やらが続いた結果
俺の体は弱っていた。
そんで午前中に病院行ってから会社に行く事にしたら
まぁひどい熱っぽかったし検査の結果インフルさんにかかっていた。

で、まるまる一週間休みをとった訳ですよ。
意識は朦朧としてるし、夢でうなされるし
一人暮らしなのと昔から恐がりっていうのがあって
ひたすらサウンドオブミュージックやらメリーポピンズやらを流しながら過ごしてたんだ。

しいいいんぱああああいないさあああああ

永遠とミュージカル映画を流して三日くらいがたった時
俺の体調も良くなってきてたのもあって
飯作ったり、トイレ行ったり、布団に入ったり
とにかく何か動作をおこす度に俺は自然と歌って踊っていた。

キャッツみたいなメイクして
猫みたいな登場の仕方で会社いったんなら
尊敬する

ちなみにこれね
https://www.youtube.com/watch?v=ljbao-JjRoM




口笛がとても苦手だったのであらゆる状況を想定して
ひたすら練習を繰り返した。
湿気をふやしてみたり、唇をかさかさにしてみたり。
今思えば本当意味がわからないのだけど
長年たまったストレスをひたすら発散してたんだと思う。

あれか
職場で急にミュージカルやろうとしちゃったのか

はよはよ

携帯で動画をとったりして
自分の表情や歌がある程度納得できるレベルに達した時
俺は何故か無敵の気分になっていた。

ものすごい達成感とか嬉しさのあまり
気が狂ったように部屋の中でずっと同じ歌を
体の動きはくるくる回ったり飛び跳ねてみたりその都度アレンジを加えながら
ひたすらに歌っていた。

怖い

スーパーに買い出ししにいってる時にも
脳内で曲がながれ俺は電柱とかを人にみたてて
人の目も気にせず踊り歌っていた。

もう、ミュージカル映画の人物が一人だけ現実世界にでてきたようだった。

スーパーとかでもステップを入れたり、ターンしてみたり口笛を吹いていた。
目の前に広がる光景すべてがミュージカル映画に補正されていた。



そしてその調子がずっっっと続き
というかますますひどくなり続け

遂に久々の出社の日が来たわけだ。

頭おかしい人やん

朝、あの曲がアラームでなる

軽やかにシンクロのように足をパタパタさせながら起き
歌いながら手際よく朝食をつくり
スルスルとスーツを着た。

靴を履く行為ひとつをとってもミュージカル
鍵をしめオートロックの自動ドアを抜ける様だってミュージカル
改札をするりとやり過ごし電車をまつ時間でさえ鼻歌と口笛ミュージカル


俺は意気揚々と会社に出社した。

でもさすがに仕事となれば別

出社してからは今までのミュージカル空間が嘘だったかのように身を潜めた
いつものただのサラリーマン
上司や同僚に迷惑をかけたことをあやまる
上司の嫌みを申し訳ない顔をしながら謝ったり
止まっていた仕事の挽回をはじめた

ただ、人はそう簡単には変われなかった

身を潜めていたはずのあの音楽が頭の中で流れる
つい手が止まってしまい声には出さないけど
口は完全に金魚状態


気づくと口をパクパクさせたり、あの映像の事を思い返していた
気を取り直して仕事をするが
頭の中であの音楽がなりつづけている

同僚に肩をトントンされたりして気がついては
仕事に集中しようと努力する

だがなりやまない


なりやまないどころか
モンティパイソンの侵攻は止まらない


上司の咳払いが聞こえた時俺はハッとした

あの静かな職場で俺は口笛をふいていたのだった

楽しそうでなにより

周りに謝った

同僚が冗談に変えてくれたりその場はどうにかしのげた



さすがに冷やっとしたおかげで
俺の頭の中のあの曲はフェードアウトしていった。


だがそれも長くはもたなかった

しばらくしてまた俺の意識とは違うところで口笛がはじまっていたのだ
たぶん３０分ももたなかったと思う

さすがに切れる上司

そりゃきれるわ
俺だって部下がそんな態度だったらきれる
1回でもきれる
それを1回は見逃してくれたのにも関わらず
まさかの2回目


「こらああああああ！！！！」


その声が聞こえた瞬間
やってしまった感と
どうしていいかわからない事や
もういろいろとテンパった結果
俺の目から涙がこぼれた

恐怖のあまり俺の体感時間はスローモーションになっていった

上司が勢いよく席を立つ音が聞こえた

涙がゆっくりこぼれる

上司の方をみるとこちらに向かってこようと１歩踏み出そうとしていた



何故かその瞬間本当によくわからないけれど
俺の頭の中ではあの曲が大音量で流れ始めた

そして俺はすべてを覚悟してこうつぶやいた


「さ…Some things in life are bad…」

見てるで

滑ってるで

あの顔の向きで、あの表情で

「They can really make you mad…

Other things just make you swear and curse・・・・」

あっけにとられる上司と同僚達

上司「お・・おい！！！！！」

立ちすくむ上司

俺の頭の中の曲は進む


「 When you're chewing on life's gristle

Don't grumble！！

Give a whistle！
」

「And this'll help things turn out for the best・・・」


ここの間が長い

次の歌詞を出すまでが気が遠くなる程長い

ただ正確に頭の中ではあの曲がすすんでいる


上司が隙をつくようにまた１歩踏み出した


俺は近くの同僚の肩に手をかけ


「ぁイーーーーン」

こっからは夢のようだった

怒鳴る上司をかわしながら

口があんぐりあいた同僚達に対して

肩に手をかけたり、机に肘をついて顔をみつめたり
そこら辺にあった書類を目をとおすふりをしたり

ステップを刻み

口笛をふく

五年も勤めた会社をこんな形でやめる事になるなんて
とか考えてた


ただでもそう思っていたけど
もう止める事はできなかった

完全再現した表情が上司をさらに怒らせようが
同僚に叫ばれようが

俺は歌い続けながら帰宅の準備をして
曲の終わりと同じようにフェードアウトしていった。


職場のドアを閉めた時俺は全速力で逃げた

これ元ネタがわかったら多少面白いんやろな

コントかよ

会社のほかのやつらにミュージカルファンはいなかったのか

職場からの着信と親からの着信

もう来なくていいというメールと
同僚からの謝りに来いとか
サイテーとかそんなメールだった。



そんな中一人の同僚から一言
「才能あると思う」
というメールがあった。


俺はすこし救われた。

その同僚は元ネタの映画を一緒に見た事がある子だった

その子から次の日またメールがあった

「表情とか完璧だった。
なんであんな事したかわからないけど
すごく良かったよ。」



会社をやめた事もこんな事になってしまったのも本当に後悔してるし
自分自身わけわからない感じだけど
とりあえずその子が評価してくれたので
全部がどーでも良くなった。


そんな話しでした。ちなみに今も無職。

ごめんね、落ちもなくて。


本当曲とか映像とか何度もみると
生活に支障をきたすからやめといた方が良い。

仕事もやめちゃったし
今は貯金で職をさがしてるけど

いまだにあの曲を聞いちゃうし

時々どうしようもなく街とかで口笛吹いちゃうけど
今はそれなりにましになったよ

1乙
壮絶な辞め方だなみんな忘れらんねーと思うよ

殺伐とした会社にミュージカルは似合わないか

ちなみに歌詞の意味はこんな感じ


Some things in life are bad,
人生には、なにか悪い事もある

They can really make you mad,
あなたを苦しめておかしくしてしまうこともある

Other things just make you swear and curse.
悪態をつかせてしまうこともある

When you're chewing on life's gristle
人生の軟骨を噛んでいるようにうまくいかないときには

Don't grumble, give a whistle.
文句言わないで、口笛を吹くのさ

And this'll help things turn out for the best.
そうすれば、人生が良い方に変わるかもしれないよ

And....
だから・・

Always look on the bright side of life, (whistle)
いつも人生の明るいほうを見つめて行こうよ　（口笛）

Always look on the bright side of life, (whistle)
いつも人生の明るいほうを見つめて行こうよ　（口笛）

If life seems jolly rotten,
人生がとても悪く見えても

There's something you've forgotten,
忘れていてもさ

And that's to laugh and smile and dance and sing.
笑って、笑顔で　ダンスして歌う

When you're feeling in the dumps,
君が、落ち込んでいるなんてのは

Don't be silly chumps.
そんなの馬鹿げているぜ

Just purse your lips and whistle, that's the thing.
唇をすぼめて、口笛吹こう。そう、そうだよ

And...
そして

Always look on the bright side of life. (whistle)
いつも人生の明るいほうを見つめて行こうよ　（口笛）

Come on...
ほら！

Always look on the bright side of life...
いつも人生の明るいほうを見つめて行こうよ

For life is quite absurd,
人生なんて不条理なもんだよ

And death's the final word,
死は最後のお約束なんだから

You must always face the curtain with a bow.
幕が閉まるその時に、お辞儀をしなきゃだめだよ

Forget about your sin,
罪なんて忘れてね

Give the audience a grin,
ニンマリ笑ってね

Enjoy it - it's your last chance anyhow.
楽しめよ　どうせ　これが最後のチャンスなんだから


So always look on the bright side of death,
そう　だから　死にだって明るいほうを見るのさ

Just before you draw your terminal breath,
最後の息をする前まで・・

Life's a piece of shit,
人生なんて、糞みたいなもんさ

When you look at it,
それを見た時にはな

Life's a laugh and death's a joke, it's true.
人生は笑いと死は冗談　それは真実

You'll see it's all a show,
それは、ショーのようなものさ

Keep 'em laughing as you go.
笑わせ続けていこう

Just remember that the last laugh is on you.
覚えておいて　最後の笑いはきみのもの

And always look on the bright side of life,
いつも人生の明るいほうを見つめて行こうよ

Always look on the right side of life,
いつも人生の明るいほうを見つめて行こうよ

Come on guys, cheer up.
おい　みんな　元気出せよー！

Always look on the bright side of life.
いつも人生の明るいほうを見つめて行こうよ

Worse things happen at sea, you know.
航海に出るともっとひどいことがある　知ってるだろ。（ことわざ）

Always look on the bright side of life.
いつも人生の明るいほうを見つめて行こうよ

I mean - what have you got to lose?
なにを失うっていうんだい？

You know, you come from nothing,
わかってるだろ　何もないさ

you're going back to nothing.
何も戻ることはないさ

What have you lost? Nothing!
何を失ったっていうんだよ？　ないだろ！

イイウタだなー

良い曲なんだけどねぇ…

せっかくフリーなんだから舞台とかやれば？

感動しました

めっちゃいい歌だな

まさにLIFE！て感じ

人生楽しんだもん勝ちだぜ

ステキ