違反なき「旧車会」拡大、観光地に騒音被害
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140509-OYT1T50214.html オートバイで爆音を立てながら集団走行するグループが群馬県内で増え、騒音被害が広がっている。
暴走族とは異なり、走行ルールに違反することは少なく、県警も取り締まりに苦心している。
「ブンブン!ブブンブン!!」
大型連休中の4日午後、高崎市の榛名湖沿いの県道で、エンジン音がけたたましく響いた。
縦に並んで、低速で走るオートバイの数は約60台。湖畔を散策していた家族連れは「おっかない」「雰囲気が台無しだ」と口々に不快感を示した。
オートバイは様々に改造され、ヘッドライトが2メートルを超える高さにあるものや
マフラー付近にエンジン音を大きくする装置が取り付けられているものもある。駐車場に立ち寄った20歳代の男性は「俺らはマジ楽しいんで」とうそぶいた。
近くのガソリンスタンドの店員は「200台近くが来る日もある。携帯電話で連絡を取り合って、各地から集まるようだ」と話した。
これらのグループは元暴走族メンバーを中心に20~40歳代で構成され、「旧車会」と呼ばれている。
県警交通指導課によると、県内では約10年前から目立ち始め、現在は、高崎市や館林市などを拠点とする23グループ(約180人)がある。
メンバーは基本的に定職を持っており、休日に赤城山や関越自動車道などで集団走行している。
ただ、信号などの走行ルールは守り、ヘルメットもかぶっている。榛名湖畔を集団走行したオートバイも、道を曲がる時はそろってウィンカーを出していた。
捜査幹部は「改造バイクを1台ずつ整備不良車両だと突き止めて、道交法違反で摘発するしかない。
集団で交通ルールを無視する暴走族のように一網打尽にはできない」と打ち明ける。
一方、「旧車会」予備軍の暴走族は縮小している。同課によると、県内の暴走族の構成員数は1980年の861人をピークに減少傾向にある。今年3月末現在は107人で、統計のある79年以降で最少となった。
背景には、2004年11月の改正道交法の施行がある。それまでは被害者を特定しなければ集団暴走を摘発できなかったが、警察官が暴走を確認すれば摘発できるようになり、取り締まりが強化された。
旧車会の台頭が、暴走族の勢力を抑えている面もある。捜査幹部は「暴走族が好む排気量400ccのオートバイが、旧車会メンバーに買い占められている」と指摘する。現在の暴走族には、集団のほとんどが原付きバイクに乗るグループや、3~4人程度のグループもあるという。
県警は、集団暴走が活発になる夏場に向けて、週末の夜を中心に、駅前や大型店舗周辺などで取り締まりを強化する。
旧車会に対しても、検問で不正改造を取り締まるなどの対策を講じることにしている。(波多江一郎)
【集団暴走】 道交法は、2人以上の自動車(オートバイを含む)や原付きバイクの運転者が共同して、著しく交通の危険を生じさせたり、他人に迷惑を及ぼしたりする行為を禁じている。
違反者には2年以下の懲役か50万円以下の罰金が科せられる。集団走行でも、蛇行運転や道具を振り回すなどの危険な行為を伴わない場合は摘発が難しい。